元気にやっていますか?
私は相変わらず、曖昧な空白とともにふらふらする毎日です。
健体壮美なあなたのことだから大丈夫だとは思いますが、
くれぐれもお体にはお気をつけください。

2010/04/19

A Interview - ある求職者への質疑

インタビュアー:それでは早速ですが、今回転職しようと思った動機を聞かせていただけますか。

求職者:はい。現在私は、中規模のソフトウェアハウスに勤めています。社員数は100人程度で、大手SIerからの2次請けによるシステム開発が主な収入源の会社です。3次請け、4次請けの仕事は、基本的にやらないので、中小ソフトウェアハウスの中では、利益率が割と良い方かと思います。ただ、去年末辺りからは景気後退の煽りをくらって空き要員が毎月発生してしまう状況になってしまったので、少し割りの悪い仕事も請けるようになりました。景気後退が主な原因ということもあって、システム開発の案件自体が減少しているという状況ですので、しょうがないと言えばしょうがないのですが、中小ソフトウェアハウスの間では、人月単価の叩き合いも始まっていて、状況は益々厳しくなるばかりです。ソフトウェア技術者としてキャリアの舵をとったからには、技術者として評価され、それに見合った対価を受け取りたいというのが、私の率直な望みなのですが、そのような状況から考えると、現在の会社ではどうしても目の前の仕事取得に走らざるを得ません。もともと大手SIerとの人間的コネでいい仕事をゲットしてきたという会社なので、技術的・ビジネス的なアピールポイントがなく、価格競争のドツボにどっぷりと浸かりながらいつともわからない景気の回復を待つしかないという現状の中で、技術者として評価され、対価をもらいたいという私の望みが叶いそうにないと感じ始め、転職を考え始めました。

インタビュアー:なるほど。状況はわかりました。この景気ですからねぇ。そういう方多いと思いますよ。技術者として評価されたい、ですか。技術志向なんですね、ふむふむ。それでは、今後の方向性として何か考えていることはありますか。

求職者:私は中途でこの業界に入ってちょうど4年間になりますが、ただ目の前の仕事をこなすだけではなく、難易度の高い資格に積極的に挑戦し、クリアしてきました。ベンダ系の資格もいくつか取得していますが、自分の技術・知識を高めるのに特に役に立ったと感じているのは、国家試験であるテクニカルエンジニア(ネットワーク)、テクニカルエンジニア(データベース)、情報セキュリティスペシャリストの3つです。3つとも、年に1、2回しか試験が行われず、合格率が15%前後です。もちろん、ただの資格ではないかと言われてしまえばその通りなのですが、ある種の優位性を示すシグナリングにはなると思っています。こいつを利用して、メシウマな優良企業に入り込めないでしょうか。例えば最近取得した情報セキュリティスペシャリストを踏み台に大手監査法人のシステム監査のポジションとか、大手セキュリティベンダの開発部門とか。

インタビュアー:メシウマですか。私もそんな仕事があったら応募したいですね。先に結論から言うと、今言われたような大手監査法人や大手セキュリティベンダに入り込むのは、まず無理だと考えてください。なぜなら、あなたがやってきたのはシステム開発業務だからです。監査法人が行うのはシステム監査、セキュリティベンダが行うのはシステムセキュリティドメインの仕事です。あなたにはその経験がありません。近いかもしれないが違う仕事です。あなた自身がおっしゃった通り、資格はただの資格でしかありません。プラスアルファのおまけです。中途でかつ素人をこの不景気に雇おうなんて奇特な会社はありません。景気がいいときにならポテンシャル採用というのがありますが、素人採るなら新卒の方がお得ですからね。優良企業ですから優秀な学生が集まるのも当然です。

求職者:・・・。なるほど。言われてみればその通りですね。少し考えが甘かったようです。

インタビュアー:最初の動機の話に戻りますが、あなたは最初「技術者として評価されたい」とおっしゃいましたが、今後の方向性を尋ねたときには「メシウマな会社に入り込みたい」とおっしゃいました。ちょっと食い違っているのではないかと思ったのですが、その辺りを少し説明していただけますか。

求職者:はい。メシウマなという表現には、もちろん給料などの待遇がよいという意味がありますが、そのような優良企業には頭がいい人が揃っているはずという予想が含まれています。その中で技術を磨いていけたら望みどおり技術志向のキャリアが歩めるのではないかと考えたのです。まあ、今の話を聞いてそれは無理だって事がわかったわけですが。

インタビュアー:ふーむ、なんとなくはわかりましたが、何だかはっきりしませんね。あなたが本当に望んでいるものって何でしょう。

求職者:実は私自身もよくわかっていないのです。日々仕事をしていて何とも言いえぬ閉塞感みたいなものが徐々に自分の中で大きくなっているくのは感じているのですが、それを言葉にしようとするとうまく表現できない、そんな感じです。

インタビュアー:閉塞感、ですか。望みというよりは、今の会社に何か不満があるのでしょうか。

求職者:一番初めに申し上げたことの繰り返しになってしまいますが、ただただ日銭を稼ぐために、目の前に転がっている仕事を安い単価で取りに行くという会社の営業スタイルに、一技術者としての未来が見出せないのです。どこの会社も同じような状況にあることを考えれば贅沢な悩みなのかもしれませんが、どうしても納得することができないのです。私は努力したいのです。努力して力をつけ、それで利益に貢献し、その分の対価をもらいたいのです。その努力の方向性が技術でありたいというのが願いです。安い単価で仕事をとり、何でもいいからやるというのは、私にとっては耐え難い努力の方法で、それに耐え抜いたとしてもいい結果が待っていないだろうという予想がさらに苦しいのです。今後益々人手が必要でなくなる業界の中で、ただの御用聞きに成り下がることは悪化を辿る未来を受け入れることと等しい所業です。

インタビュアー:つまり、会社とあなたが考えるキャリアの方向性が食い違ってしまっているということですね。閉塞感とおっしゃった意味が少しわかりました。でも、先程メシウマな会社に入り込みたいとおっしゃったことからもわかるように、その閉塞感をどうやって打破するべきかを悩んでいらっしゃる。具体的にどう行動すべきかをまだご自身でもよくわかっていないようですね。

求職者:全くその通りです。何せ自分が望むものですら、うまく言葉で表現できないくらいですから。

インタビュアー:自分が本当に望むものを認識するのは簡単そうで難しい作業です。怠けてはなりませんが、焦る必要はありません。あなたが本当に望むものをもう少し広い視野で考えてみてはどうでしょう。転職だけが解決方法とは限りません。もっとあなたの中の方にある、そのグニャグニャしたヤツを引きずり出して検証してみましょう。そのために私も微力ながら協力いたします。

求職者:広い視野、ですか。一体何から考えたらよいものやら検討もつきませんね。でも、そうおっしゃって頂けて少し期待を感じることができました。もう少しよく考えてみます。でも、転職の話を超えてまで、そんなに親切にしていただいてご迷惑ではないでしょうか。

インタビュアー:いえいえ、そんなことはありません。私はインタビュアーであって、転職コンサルタントではないのですから。

(続く)

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